椎骨と椎骨の間にある椎間板がつぶれ、中身がはみ出してしまう椎間板ヘルニアは、どうして起こるのでしょうか。
椎間板は年を取るごとにだんだんと固くなり、弾力がなくなっていきます。それでも正しい姿勢で頭部がバランスよく背骨の上に乗っていればいいのですが、生活習慣で首を前に出しすぎて余計な力が加わったり、さらに筋肉の力が衰えてそれを支えきれなかったりすると、ついに重みに耐えられなくなり、ブチュっとつぶれてしまうのです。そしてこの椎間板の痛みやすい部分が、重い頭を支える首、すなわち頸椎と、身体全体を支える腰すなわち腰椎であることは、わかると思います。
ところが、腰椎のヘルニアが一般的によく知られているのに対し、「首がヘルニアになった」と話す人はあまり多くはありません。病院で「頸椎椎間板ヘルニアです」と診断される方も、あまりいないのです。
そこに問題があります。
この事実は、頸椎椎間板ヘルニアが珍しい病気だからではありません。病院でそう診断されなくても首にヘルニアを患っている方は、その数十倍はいるのではないかと私は考えているくらいです。
その理由のひとつは、この病気はレントゲンではわからないからです。MRIの設備がある病院は、まだ決して多くはありません(あっても、多くの患者さんの診断には使ってないこともあります)。その結果、頸椎椎間板ヘルニアという診断がなかなか下されないのです。
しかも、椎間板ヘルニアの治療ができる病院は非常に限られています。それもあって、あえてこの病気に目をつぶり、その病院で治療ができる病名をつけておいて、気長に治療を続けようとする病院もあるのです。いわゆる対症療法だけを続けながら様子をみるのですが、もし本当にヘルニアにかかっていた場合、原因は取り除かれないのですから、絶対に完治しません。
さらにもうひとつ、椎間板ヘルニアの患者が少ない理由として、この病気が必ずしも発症を伴わないという事実もあげられます。
椎間板が押しつぶされ、中の髄核が外にはみ出てしまっていても、たまたま神経を圧迫していなければ、痛みも、しびれも起きないことがあるのです。
もちろん頸椎の運動性は衰えるでしょうが、それはたいした症状ではありません。だから、気づかずにヘルニアもちを続けるケースがあるのです。
本人に自覚症状がなく、毎日、普通に暮らしていたら、わざわざMRIを撮ってみようとは思いませんよね。
ところが、現実にヘルニアは体内にあるのですから、いつか身体に異変が生じることがあります。そのときになって慌ててMRIで撮影し、異常がわかるのです。
ですから健康だと思っている人でも定期的にMRIによる診断をしたら、もっと多くの椎間板ヘルニアが発見されるのではないかと思っています。